最終レポート3

体験による「視野の拡大」と「認識の深化」


私は九州大学への入学以前から伊都地区への一部移転について賛否両論あることを知ってはいたが、その詳細にあまり実感を伴うことがなかったために一度はそのことについて自分自身で考えてみたいという思いがあった。
それがこの少人数セミナー「環境保全のススメ」を受講した当時の大きな動機だった。
しかし、少人数セミナーという特有の講義の形態とその内容によって得られたのは自然環境保全の基本的な概念だけではなく、振り返ってみると現在のあらゆる地球環境問題を考える過程で次に挙げる少なくとも四つのことを学ぶことができたと思う。


まず、一つ目はやはり環境保全の重要性である。
これまで環境保全環境保護について学んだり考えたりしたことはあったがその当時は前提となる知識が乏しい上にいずれの環境問題も非常に大規模で身近に感じることもなく、いま思えばその背景について自ら積極的に再び考えたり調べ直したりしてみようとすることもあまりなかった。
けれども、その環境問題がかなり深刻で現在取り返しのつかない事態に陥ろうとしていることを徐々に認識し始め、それが世界中の国家の政治や企業の活動に大きな影響を及ぼしていることも講義と自主学習が進行していくにつれて分かっていった。


次に、二つ目はコミュニケーションの重要性である。
自分の考えを分かりやすく説得力のある話し方によって伝えることはもちろんであるが、さらに他人の発言を自分で咀嚼し理解できるように丁寧に正確に聴くことの大切さと難しさを痛感した。
そして、何よりあらゆることに関して自分の意見や考えを示すように求められた時には円滑に対応できるようにならなければならないと思った。
そのために自分の注意を常に周囲に払い情報を受信するように心掛けて知識と知恵の両方を日々少しずつであっても身につけていきたい。


そして、三つ目はマネジメントの重要性である。
たとえば、環境保全の大切さをより多くの人々に訴えるためにはその手段としてイベント等を計画することが考えられる。
その際に必要となるのは環境保全の知識だけではなくマネジメントやリーダーシップである。
意図に沿って現実的な計画を立てることや組織をうまく誘導や運用すること、参加者に自発的に何かを感じてもらえるような効果的で楽しい活動を企画することのできる能力が今後さらに必須になることに気づかされた。
また、環境破壊や軍事費、国債なども含めてこの世界には一見矛盾しているような問題でも、それなりの背景が存在し、経済の仕組みがそれを助長している場合が多いことを知った。
特に、このことを痛感させられたのが農業体験だった。国内の農業が厳しい状況にあることは小学生の頃から聞いてはいたことではそれが大学生になってやっと実感した。
ecologyについて考える際はeconomyの要素が欠如していては実社会において机上の空論になってしまうことを学んだ。


最後に、四つ目は個人の倫理や価値観の多様性である。
環境保全はなぜ必要なのか。それはいったい誰のためなのか。
このようなことを講義で考えたときに自分が考えもしないような意見が他の学生の方々から多く出た。このほかにも価値観の多様性を感じる機会が多くあり、いま思うと与えられたテーマについて討論することで同世代の人々の新鮮で変に飾らない意見に触れて刺激を受けることができたのは貴重な体験だった。
それはまた、あらゆる価値観や倫理に基づいて社会が構築されていることを体感した時間でもあった。


このように、私にとってこの少人数セミナーは実社会に直結した経験や、常識とされるものやこれまでの自分の価値観について成人する前に改めて立ち止まり考え直すことで自分の将来についても考えることができた本当に有意義な時間だった。
少なくとも自分が様々なことについてこれまで知らなかったということ自体を知ることができた。
それは自分にとって非常に大きなことであり、これからも社会が抱える問題について自分の意見や考えをさらに追求し発信していきたい。
最後に教員や他の学生の方々、そして農家の方々に心から感謝の意を述べたい。

芸術工学部1年男子学生)