最終レポート5

この少ゼミを受講したのは、もともと環境保全に興味がありその活動に関わってみたいと思っていた時に、偶然、環境創造舎の活動を知ってこのゼミが何かのきっかけになればと思ったからであった。
このゼミを通して環境保全の活動やその周縁にあることなどについて真剣に考える機会を得られ、また実習で農業に携わっている方の生の話を直接聞くことができ、現場をごく一部ではあるが実際に垣間見ることができたことは自分にとって非常に貴重な経験となった。
しかしこの他にも多くのことをこの少ゼミを通して得ることができ、それらが私にとって特に重要な成果であったように感じられる。


まず最初に具体的な成果として、この少ゼミで行った作業のなかで、特に印象に残っている利己と利他の話を挙げたい。
環境保全とはそもそも何のためなのか」というディスカッションの中で、「利己」と「利他」についての考え方が一つの大きなテーマになった。
人間が生きていくためには他者との関係性が不可欠だという先生の提示に沿って、自己の拡大という概念、自己と他者の境界線はどこにあるのか、などについて様々な意見を交わした。
私はもともと、状況や個人によって物の見方は多様であるから、世の中の多くの物事の状態を表す表現は表裏一体であり普遍的に明確な区分をすることはできないし、一般的にはすることに意味は無いという考えを持っている。
そのため利己と利他という概念はそもそも一体のものとして捉えるべきであり、その線引きはそれぞれの状況や個人に帰属するものであるから対立概念として捉えることには反対であった。
自分の中では結局その考えの枠を出ることはなかったが、しかし他の人の「全ては利己であり利他という物はない」という意見に出会った。
これは自分が思いもつかなかった考え方で、大きな衝撃を受けた。
それによって自分が今まで当たり前のように思っていた視点とは別の視点があることに気付けたし、その視点から自分の考え方を改めて見つめなおす機会となった。
このディスカッションはとても充実したものに感じられ、特に印象深く残っている。


次に、授業全体を通しての私の成長について述べたい。
この少ゼミを通して私は多くの点で何度もショックを受けた。
それらのショックに出会うことで目に見えないながらも自分の中で物の見方や価値観といったことが少しずつ変化し、さらにその積み重ねによっていくつかの点で明らかに変わったと自覚できることがあった。
しかしまだ自分でもうまく整理できていないことも多いので、私の成長として、授業全体を通して私にショックを与えたこととそれによって変わった、得られたと思うことを挙げていく。


まず一つ目に、ブレインストーミングやディスカッションなど意見交換の場において、自分とは異なる(思いもしなかった)意見や考え方に何度も接した。
これは単なる知識の増加にとどまらず自分だけでは思い至らない考えや視点の発見につながった。
自分の中で考えを深めていく作業ももちろん大切だと思うが、自分ひとりではある考えについて次のステップに到達することはなかなか難しい。
そこに入ってくる他人の多様な意見が非常に良い刺激となり、一気に考えが飛躍するということも経験できた。
さらに相互の意見交換によって、自分の知識がいかに少ないかを自覚でき、自分の考えを見つめなおし、さらに相手の考えの影響を受けて自分の考えが微妙に変化するなど、一つの物事に対する理解度をより深めることができた。
加えて、それらの新たな視点の獲得や意見の相互的な効果を得られる対話を心から楽しいと実感する経験ができた。そのことによって対話に積極的に参加するようになった。今までは何か考えがあっても発表することをためらうことが多かったのでこれが最大の変化といえるかもしれない。
ここで大事なのは、発言しやすい雰囲気があるという前提であろう。
先生方の進行と、メンバーの活発な発言に感謝したい。
この自発的・積極的な態度はどのような場面においても重要なことだと思う。
この変化をこの場限りのものにせず他の場でも生かせるように意識していきたい。


それから二つ目に、毎回最後の感想において、その時行われたことを自分で振り返り整理することができたことも重要であったように思う。
紙に書いて一度冷静に振り返ることで、授業中には気付かなかったことが見えてくることもあった。
またそれによりその授業での成果の定着度がさらに上がったと思う。
仮に充実した意見交換などが行われたとしても、今まではそれがその場限りで終わってしまい十分な成果となっていなかったことが多かったのだということに気がついた。
このこともまた他の多くの場面において応用できる重要なことであり、それに気付けたことは大きな成果であった。


今回の少ゼミを通じて得られたことをまとめると、新しいこと(物の見方)へ気付き(発見)の喜びや、自発的な態度の重要性、自分とは違った考えを持つ他の人との対話がとても楽しいものであることを改めて自覚できたこと、ということができる。
これら頭では分かっているつもりだったことについて実感を伴って再認識できたことが最大の成果だと思う。
少ゼミで得られたことはみなその場限りのものではなく、他の様々な活動において、さらには生きていく上において重要なことばかりであったと思う。
これらがその場限りのもので終わってしまうことの無いよう、常に高い意識を持って日々の生活を送っていきたい。


(文学部2年男子学生)