最終レポート6

「少ゼミをつうじての私の学びと成長」


私は最初この講義を受けるつもりは全くなかった。
というよりこの講義の存在すら知らなかった。
後期が始まって最初の週にこの講義に出席した中牟田君に誘われてこの講義を受けることにした。
誘われた時は「少人数セミナー」という名前だけで絶対に受けたくないと思ったが、テーマが環境問題というほかの少人数セミナーより身近なテーマであったことと、前期の「伊都キャンパスを科学する」という講義の中で一番印象に残った佐藤先生の授業であったことが少し私にはおもしろそうに思えたので、一度出てみておもしろくなかったら違う講義を取ろうというような気持ちで受けてみることにした。
それでもこの時は受けない気持ちのほうが大きかった。


しかし実際に講義を受けてみるとこの講義は私が今まで受けてきた講義の中で一番おもしろい講義だと感じた。
最初の講義の内容はどんなものであったかは忘れたが、講義が終わった後にとても充実した時間を過ごしたような気がして少し興奮したことは覚えている。
そのくらいこの講義は楽しかった。
そしてこの講義が一週間の内で一番楽しみな講義になり、月曜の4限が終わるとたぶん「仕事が終わって一杯飲みに行くサラリーマンの気持ち」に似た気分を味わっていたと思う。
楽しい気持ちで学ぶことができるという私が入学前に思い描いていた大学の講義を始めて受けることができた気がする。


この講義で一番印象に残った内容は伊都キャンパス周辺の生態系の保存である。
あの地域にいる動植物を保護するためにあのような大規模な引越しが行われていたと知って驚いた。
ただ木を移植するだけではなく、その周辺の土ごと移植しなければ全く違う環境に移すことと同じだということは、教授や専門家の間では当然の知識なのかもしれないが、私のような学生にはとても新鮮な考え方で勉強になった。
また、たんぼの中にもたくさんの生き物が生活していて、しかもその生態系がたんぼの外の生態系と関係していると知ったときはたんぼの偉大さというものを初めて感じた。


このようにこの講義で学んだ知識は身近なものであるからか、とても新鮮であり興味を持つことができた。
しかし、私が一番この講義を受けてよかったと思う理由はお互いに自分の意見を出し、合い話し合う楽しみをみつけたことである。
私は今まで自分の意見を口に出したり表現したりすることが嫌いだった。
そもそも私は少し猜疑心が強いようで、人の目を気にして、人付き合いが苦手だった。
しかしこの講義は少人数なので話し合いになると必ず一言は発言する機会が出てくる。
だからきっと最初この講義を受けたくなかったのだと思う。
しかし逆に少人数なのであまり周りの目を気にせずに発言できたのかもしれない。
だんだんこの講義での話し合いを行っていくにつれて、「なんであの人はそう思うのだろう」とか、「今の考えは自分の考えと着眼点が全く違う」のように次々と新しい疑問が生まれて、また自分で考えて整理して発言するというサイクルがとても楽しく思えるようになってきた。


それはこの講義の中だけにとどまらず、友人と酒を飲んでいるときにも色んなことについて話し合いをした。
そしてその中でまた新たに私は「自分が思っていることをうまく言葉にして表現することができない」ということに気づいた。
このことに気づいたときは本当に悔しかった。
悔しかったので友人にどうしたら自分の考えを上手く相手に伝えられるのかを聞いてみた。すると友人は「知識がたりないんじゃないか」と言った。
そして知識を増やすには本を読んでみればとアドバイスをもらった。
そこで私は本をたくさん読んだ。
読書は嫌いだったのだが、とても自分自身が悔しかったので頑張って小説ではない本を読んだ。
そしてまた嫌いだったものから楽しみを見つけることができた。
それは知らない言葉の意味を調べて知っていくことだ。ほんの数分前まで読み方も意味も知らなかった言葉が、読めるようになり、意味がわかるようになるときは本当に成長した気分になれる。
そしてそのような言葉を日常生活で使ってみようと試みるが難しくてなかなか上手くできない。
しかしそうして何かのために努力することがとても久しぶりだったので、できなくてもそれなりに楽しむことができた。


最近のこの「嫌いだったことが好きになる」というよいサイクルはこの講義を受けたから始まったのだ。
もしこの講義を受けていなかったら自分の意見を言うのも嫌い、本を読むのも嫌いというような今ではもったいないとさえ言える状態のまま過ごしていただろう。
レポートにしても今までは字数制限をクリアしたら強引に終わらせていたのに今は自分が思っていることを書きたくてしょうがない。
自分でも驚くほど変わったと思う。
前期までの自分からは全く想像がつかない自分になっていると思う。他の人はどう見ているかわからないが私は自分がとても成長したと思っている。
そのきっかけを与えてくれたのは間違いなくこの講義である。この講義に誘ってくれた中牟田君、様々なことを教えてくれ、話し合いの場を設けてくれた先生方、そしてたくさんの刺激を与えてくれた6人にはとても感謝している。
将来私がもし万が一偉い人になったら私のおごりでみんなで酒を飲みながらまた話し合いましょう。


(文学部2年男子学生)