最終レポート10


工学部1年男子


工学部1年 岩永
九大に入って、初めて受ける授業が続く中、期待していた内容のものがなかなかなく、あせっていました。それは、自然と触れ合うフィールドワーク。中学、高校と受験を目標とした勉強ばかりを続けていて、大学ではもっと実践的で活動的なことをやりたいと願ってました。そんなとき、友達に紹介してもらった少人数セミナーはまさに理想的だったと思います。自然とのふれあいに加え、「食」というテーマをもりこんだフィールドワークは本当に充実していました。
まず、酪農体験。牛の乳搾りやエサやりなど、知識として知っているものの、やったことがない体験ばかりで新鮮味がありました。危険だったけれども、マムシとの出会いもそう思います。できたてのバターやヨーグルトはすばらしい味でしたが、あまり売れてないと聞いて、新しい事業を成功させるのはやはり相当大変なんだなと思いました。そんな苦労の中でも楽しそうに笑う酪農家の方々のことを、不思議に思いつつもうらやましく感じました。
次に、漁業体験。とれたてのカキは磯の香りがとても強烈で、海の上でないと味わえない濃厚さがありました。漁業はやはり原油高の影響を大きく受けているそうで、今では遠くへは漁業に行けず、魚もあまりとれないそうです。だから、近海での養殖が多いと聞いて、漁業の現実に寂しさを感じました。天然の味を次世代の人に伝えるためにも、伝統的な漁業のことを忘れないでほしいと思います。
最後に田植え体験。本格的な田植えと大勢の子供の世話を期待していましたが、予想と違い少し残念でしたが、ユニークな田植えと地元の温かい家族の方々とのお話ができて、とても勉強になりました。子供たちはすごく好奇心旺盛、自然が大好きな子ばかりで、こんな小さな頃からこんな体験ができて、うらやましく思いました。
その後の昼ご飯は、初の弁当の日。みんなうまく料理していて、「食」に対する関心が強いんだなと感じました。農家のみなさんの素材を生かした料理もとてもおいしかったです。どの活動も全く違う内容でしたが、共通して言えるのは全員が人生を楽しんでいると感じました。どの活動でも人に安全安心おいしい食べ物を提供していてるから、つくってる農家の方々自身も、たとえ先行きが不安でも、安心して楽しんで笑っているんだなあと思いました。自分のやりたいことで精一杯に生きてる人だからこそ心の底から笑えるんだと思います。そんな農家の方々と出会い、とても貴重な体験ができたことを嬉しく思います。特に田植え農家の方が言った「私たちは田んぼをつくり、田んぼが稲をつくる」という言葉がとても印象的でした。稲は自分達だけでつくっているのではなく、自然の占める部分が大きいという意味だと思います。自然に感謝しつつ、共生していくことの大切さを感じました。これと似た意味の言葉を他にも聞いたことがあります。最近CMで聞いた「自然にあるものをつくろう」という言葉です。人間を含む生物や草木はもとから地球にあったもので、環境を破壊することはありません。もとからは自然になかったものである、化学製品を人間がつくりだしたからこそ、地球の歯車は狂ってしまったのだと思います。地球にあるものだけでそれ以上を望まず生きていくことが大切であると感じました。
またあるいは、リオで行われた伝説のスピーチ。スズキの「どうやって直すのかわからないものを、こわしつづけるのはもうやめてください」という言葉に深く考えさせられました。弱冠12歳の女の子が述べたこのメッセージには、いろんな意味が含まれていると思います。まず純粋に環境破壊をやめてほしいということ。自分達の未来を左右する今の被害の大きさを切実に訴える気持ちがうかがえました。そして、こわしてもまたつくれる、もしくはもういらないと考える大人の気持ちを改めてほしいということ。先日、テレビ番組で「ホッキョクグマがいなくなっても私たちになんの影響もないから、かまわない」という意見があることに心底驚きました。また、緑を失った場所に緑を戻そうとする人々を見て、こんなことなら最初からなにもしなければ良かったのに、と思いました。人間は自分達の力を過信している、自分達のやっていることをしっかり見直すべきだと思います。今回、3つのフィールドワークに参加し、環境に対する知識と理解を深め、自分の意見をもてるようになったことが自分の成長であると思います。また、野外活動においてリーダーに求められることを知り、船で生き残ったときの適切な行動を知り、様々な知識を得ることができたと思います。一人暮らしになり、徐々に分かってきた「食」のもつ大切さ。この身近で小さなことは、人の笑顔や優しさへとつながって、地球環境を守ることにつながると確信しています。自分は工学部なので、工学部だからできるような環境への配慮を、常に意識して行っていきたいです。こんな貴重な経験を得たのだから、未来の地球の責任者としての自覚を持ち続け、次の世代に美しい地球を見せてやりたいなと思いました。