最終レポート11


農学部1年女子


人が生きているとは、どういうことだろう。今の私たちにとって、生きていることは当たり前のことのように感じられる。身の回りには食料があふれ、それを当然のごとく生きている。しかし、本当はどれも貴重な自然の恩恵の賜物であることを気付かせてくれたのがこのゼミだと思う。私がこのゼミを受講しようと思った理由は、以前から環境問題に興味があり、「糸島の環境保全のススメ」という、このゼミの題が目にとまったからだ。私は自然が好きで、環境問題に取り組みたいという思いもあって農学部に入った。環境問題と言えば、グローバルな問題で、世界規模で環境問題の実状を知り、環境破壊を食い止める解決策を模索することがテーマであると思った。当然このゼミでもいかに糸島の環境を守るかという対策について調査・研究を行うのだと思っていたが、このゼミの視点はもっと身近なところにあった。
田んぼ、里山、そして人と人とのつながり。このゼミで学んだのは、そんな本当に身近なものだった。しかし、これが意外と盲点でもあった。水田にどんな生物がいて、どういう食物連鎖をなしているか、農作業の体験学習の事業をいかに運営するか、考えてみると意外と分からない。一人で考えても分からないことをグループで意見を出し合いながら議論することは、新しい考えの発見になり、また自分の考えをまとめる力の向上にもなった。このゼミでの話し合いはとても価値があった。みんな環境保全に興味を持って参加している仲間であり、積極的に自分の考えを述べる力がある。受け身の授業ではなく、自分で考えて言葉に表さなければならないこのゼミのスタイルは、いつも人任せにしがちな私にとって大きな刺激となった。
そして、三度のフィールドワークはとても大きな経験となった。酪農、漁業、田植え、どれも初めての体験だった。毎回、壮大な自然に触れて感動した。そして、農家や漁師の方との意見交換を通して、農業・漁業の大変さ、抱える問題点について学んだ。その度に、この自然と産業を残さなければという思いに駆られる。おそらくこの自然を見れば誰しもがそう思うだろう。しかし、現在、農業や漁業の地位があまりにも低いように感じられる。仕事を増やせば増やすほど不利益を被る現在の状況では、今後これらの産業は衰退してしまうかもしれない。人間にとって必要不可欠なこれらの産業が衰退するということは、私たちが生活できなくなることに等しい。生活を支えるこれらの産業はもっと保護されるべきだ。そう考えると、日本の生活を支えている農家、漁師、その他食に関わる仕事に携わる人々に強く感謝したいと思った。フィールドワークから帰ってくると、いつもそんな感謝の気持ちでいっぱいになる。ただの白ごはんもとてもありがたく感じる。そして、スーパーに並んだ一つ一つの食材が、自然の恩恵を受けて、生産者の手を通しているからこそここにあるのだということを深く感じる。当たり前だと思っているものの大切さや貴重さに気が付くことはとても難しい。それがなくなって不便な思いをするまで気が付かないものだ。しかし、それでは遅い。このゼミの活動を通して、私はそれに気が付くことができたように思う。普段できない体験をして、そして改めていつもの生活を振り返ることには大きな意味があった。
このゼミでは環境保全という課題をテーマにしながら、その枠にとらわれない、生きるということそのものを学んだ。フィールドワークで得た経験は、自分の思い出で終わらせてはならない。大学生としてこのゼミで学んだ以上、この経験を生かして貢献しなければならない。私は農学部として、今後農業や環境問題に関わる際に、ここで得た農業のありがたさ、人とのコミュニケーションのスキルを活かしていこうと思う。そして、もっと多くの学生にこのゼミを受講してほしいと思う。きっと、みんな自分の中で何か新しい発見をするはずだ。一人一人が少しでも変われば、いつか社会も変わる。私は今、このゼミを受講して自分が少し変われたという充実感を持っている。誰でもそんな気持ちにさせる、大きな力をこのゼミは持っている。