最終レポート16


芸術工学部1年女子


私が、このゼミを受講したわけは、環境設計学科に入ってから初めてフィールドワークを体験し、「フィールドワークって面白いかも」と思っていたからである。ただ、みんなでお出かけして単位が貰えるなんてラッキー、位の気持ちだった。だが、この少人数ゼミを通して、私が学んだことはとても濃度が高くて、週に1回という少ない授業の中に学びが詰め込まれていた。このゼミでの学びは、知識ではなくてもっと感覚的なもので、私を変えてくれたものだったと思う。特に、この少人数ゼミを受講して学び、成長したことは、環境や食を私の問題として考えるようになったことと、人や物事に関わる勇気を持つことが出来るようになったことだと思う。
私は、今までは環境や食について深く考えたことはなかった。もちろん、今は環境問題が大きな問題になっているので、小さい頃から学習する機会が何度もあった。だが、やはり環境問題というのは私からは遠い問題であって、個人ではどうしようもないことだった。また、食については食べ物について困ったこともなかったし、既製品であってもおいしければ良いと思っていたので問題意識など持ったことがなかった。でも、このゼミで、環境の変化で困っている人や食に気を配っている人と出会って、身近な問題として、この2つの問題を考えることができるようになった。
特に、食の問題、大切さといったものは、実際に自分が作ったものがおいしいと言ってもらえたことや、おいしい手作りの料理を食べることで、初めて体験することが出来た。自分が作った料理を、人に食べてもらうというのは高校1年生以来だったし、子供時代に親に料理を食べてもらうこともなかったので、他の美味しそうな料理たちと私の料理が一緒に並べられたときは緊張したが、食べ始めると、楽しいという思いだけになった。このとき、おいしくなかったらどうしよう・・・などと頭で考えるのではなくて、体で感じることが重要なのだなと感じた。感じたことは、言葉で相手に伝えることは難しくて、感じた本人ではないと自分からは遠い問題として意味がなくなってしまう。他人に伝達できないし、もしかしたら体験の次の瞬間には自分の中でも感じたことが消えてしまうので、体験し続けなければならないという点において、体験学習は非効率的かもしれない。けれども、食などの生きるために大切なことは、体験しなければ学べないと思った。環境問題が大変だ、孤食が進んでいる、と頭で考えるのではなくて、実際にやってみることで、本やテレビで知るよりも何倍も多くのことが学べるということがわかった。
次に、私が大きく変化したなと感じていることは、いろいろなことに関わることが楽しいと感じるようになったことである。特に、人と交流を持つことが楽しいと思うようになったことは、私の中で大変な変化である。私には、小さい頃から、他人から嫌われているのではないか、笑われているのではないかという思いがあって、深く関わる人を増やすことは、私を嫌う人を増やすことだと考えてきた。誰にでもある疑問だと思うが、電車内の笑い声が自分のこと笑っているのではないかという疑問を払拭することが出来ずに、ここまで引きずってしまっていた。高校時代は、美術部という10人程度の人たちの中が交流の全てで、クラスメイトとも簡単なあいさつくらいはするが、それ以上は仲良くならないようにしてきた。でも、このゼミでフィールドワークへ行ったり、ゼミ室でみんなと作業する中で、関わらなければ何も理解できないと思った。また、人と関わっていって、積極的に発言し関わっていくことでしか、私は存在しないんだと感じた。今までは、いてもいなくてもどうでもいい人だったと思う。少人数ゼミの中の漁業実習で、以前の私に戻ってしまっていて、カキのPOPを発表できなかったことが、悔しいことである。漁業実習の話し合いでの私は、いなくてもいい人だっただろうなと思う。
ゼミの初回で佐藤先生が言った、やってみないと意味がないという言葉は、私のテーマになっているほどであり、思い返すことが何度もあった。どうしようか迷っているとき、この言葉を思い出して、実際にやってみるということが前期だけで何度もあり、その一歩のおかげで今までで一番濃い半年になっていると感じる。「やってみる」を実践していくことで、濃い体験ばかりになり、考えがぐるぐる回ってしまうこともあった。今でも、消化できていない問題がたくさんある。こんなに頭が混沌としていて不安定になっているのは初めてだけれど、ここから何か生まれるのではないかという予感がしているし、生まれたものは私にとって大切なことなんだろうと思う。これからも、体験し続けて混沌の部分を増やしていきたい。混沌が多くなれば、可能性が増えていくと思うからである。